米国で注目!Google Nestのファウンダーが創業した生ごみ処理機「Mill」を使ってみた!〜家の生ごみを鶏の飼料に活用するサブスクサービス
ごみが埋め立て地で処理されている米国では、埋め立て地の不足もあり、ここ数年、複数の都市で家庭の生ごみの分別回収が行われています。市が堆肥化している地域もあれば、メタンガスを取り出して電気として再利用している地域もあります。その行政の動きに伴って、コンポスト事業や生ごみの処理事業に参入する企業は増えています。
その中でもユニークな事業を展開しているのがMill社。Apple社のエンジニア、そしてGoogleのスマートホームシステム「Nest」の共同創業者であったマット・ロジャー氏がつくったこの会社では、社名と同じ「Mill」という生ごみ処理の事業を2023年にスタートしました。
この事業を説明するユニークな点は以下の4つ。
専用の生ごみ処理機をアプリで操作して、家庭で一生ごみの一時処理をする
処理した生ごみが容器いっぱいになったら、家庭で堆肥として利用するか、郵送して再処理後に鶏の飼料として活用
飼料にしたい場合には簡単に郵送できる(2024年春以降、有料になりました)
2024年春までは、月額利用のサブスクリプションで購入可能。
現在は機械の買い切り(リース型の支払いも可能)。
使い心地はいかがなものか?と思い、試しに使ってみることにしました。
大型の専用機械でキッチンで毎日生ごみを一次処理できる
Millは、オーダーすると、この大型の生ごみ処理機が郵送で届きます。そしてアプリをダウンロードします。アプリと機械をリンクをして準備は完了。すべての操作はアプリから可能です(もちろん、機械本体で操作も可能)。
使用方法はとても簡単です。
好きな時に、生ごみを機械に入れる。
毎日定時の処理時間を決めてセットしておく。処理は裁断と乾燥。処理が始まると蓋が開かなくなるので夜中が便利。
処理した生ごみが中の容器いっぱいになったら、中の容器を外して、取り出す。※処理方法は後述します。
それだけです。
大きさは、アメリカの広い家庭にはちょうどいいのですが、日本のキッチンに置くとしたら、ちょっと大きいかもしません。玄関前に置かれた様子。
内部の構造はこんな様子です。
ここに生ごみを入れていくと、裁断、乾燥されます。
背面にチャコールフィルターを入れる場所があり、脱臭、消臭のためのフィルターなので、定期的に交換の必要はありそうです。まだサービス開始から1年ほどなので、替えが必要な人はいないのか、購入方法と価格はわかりませんでした。
処理できるものできないものは、日々アップデート
アプリは常にアップデートされています。その中にFood libraryというコーナーがあり、処理のガイドブックです。処理できるもの、できないものは、随時追加されていきます。野菜や、果物はもちろんOKですし、食べ残しも大量でなければ入れられます。しかし、脂類、大きめの骨、草花、ジュース、アルコールはNGのようです。鶏の餌として利用することを想像してみると、これは入れない方が良さそうと、ある程度は想像できます。最初に大まかなガイダンスの冊子がパッケージの中に同梱されてくるので、もっと細かく知りたい場合、イレギュラーなものを入れたくなった時に、アプリを確認して入れられるかをチェックします。
パッケージとアプリのUIがよくできていて、ストレスがない
millは、はじめて届いた時から、説明書を読まずとも使えるほどに、ユーザーインターフェースが優れていることが特徴です。
たとえば、最初にパッケージを開封する時。すべての指示が、明確にダンボールに入っているので、子どもでも簡単に開封することができました。
そしてアプリ。やることを明確に指示してくれるため、誰でも簡単に、操作することができます。
溜まった一時処理された生ごみを、郵送するときのパッケージも提供されていますが、それもまた、入れやすい、ぴったりのサイズに設計されていて、溢すことなく、段ボールの中に移すことができます。
もちろん、送付状も提供されてくるので貼るだけで準備完了。
荷物の回収依頼もアプリから一瞬でおこなうことができます。これがとても便利。
機械のつくりもとてもよくできていて、1年間ほど使いましたが、ストレスを感じたことは一度もありません。アプリもとても使いやすく、この開発にかかった時間とコストを想像せずにはいられないほど。月額30ドルで提供していたら、3年は継続して使ってもらえないと初期投資が回収できなさそうだなぁと思っていたら、サブスクリプションではなく、買い切りサービスに移行していました。
最後に、費用を紹介します。
999ドル(約14万円)は高額か?
私は、2023年の先行販売期間に予約をしていたので、月額利用のサブスクリプションを利用していました(月額は33ドルです)。現在は999ドルの買い切りが基本となっており、オプションで月額29.99ドルで機械のリースを選ぶこともできるようです。
月額33ドルのサブスクリプションサービスを使っている人は、家庭で機械で一時処理した生ごみを、月に何回でも無料で、専用ダンボールに入れて飼料にするために送付することができます(専用ダンボールももちろん支給)。もし、その一次処理した生ごみをそのまま、家で堆肥化したい場合には、送らずに庭に埋めることも推奨されています。
アメリカは敷地が広いこともあり、コンポストやガーデニングをバックヤードでやっている人も多く、一時処理した生ごみを、そのまま庭に埋める人も多いのではないかと思っていたところ、本体買い切りとなった価格変更のタイミングで、鶏の飼料として送付するサービスはオプション(有料)となっていました(2024年春以降)。
さて、この月にするなら約30ドル、そして買い切り999ドルの価格はどうなのでしょうか?日本では、すべてのごみもリサイクルも、ほとんどのものが自治体が回収し、持っていってくれます。もちろんそこに皆さんが払っている税金が投入されているわけですが、ごみ回収袋を購入する以外は、まるで無料のごとく、ごみは回収されています。
一方、アメリカの家庭は、行政によるごみの回収の種類がが日本ほど充実していません。そのため、ある程度の費用を他のごみ回収サービスに払っていたりします。たとえば、私が居住する西海岸のオレゴン州・ポートランドでは、製品プラスチックや、衣類などのリサイクルは行政が回収していないため、民間による回収サービスが普及していたり、定期的に民間の事業者が、リサイクルイベント(もちろん有料で回収)を開いていたりもします。
RidWellというシアトル発の事業もそのひとつ。隔週や月1で、専用ボックスに衣類やプラスチックフィルム(ラップ)などを入れておくと回収してくれます。
また、ポートランドでは生ごみの場合には、家庭ごとの個別、分別回収がおこなわれています。生ごみの専用コンポストボックス(下の写真の緑のもの)を含む、この3種類のボックスをレンタルするために、月に30-50ドルの費用を家庭は払っています。
料金にはコンポスト以外のボックスのレンタル費用も含まれるため、一概には言えませんが、このボックス代、そして指定されたごみを捨てるための袋の購入費用が発生しています。その費用と利便性と環境への配慮を加味して、月に33ドル、もしくは29.99ドルを高いと思うか、安いと思うかは、家庭によって意見が割れそうなところです。
世界を見渡すと、住んでいる地域の自治体によっては、もっと高額なところもあるでしょう。aboutたMillを使えば、生ごみの匂いはいっさいしなくなり、量も減ります。回収費用が高額だったり、都市部のアパートに住んでいたりする人には惹かれるサービスなのかもしれません。
我が家では、一時的に使用を停止してみたところ、家族から「不便になった」「クオリティ オブ ライフが低下した」という声が聞かれたので、暮らしが便利になり、生ごみをただ捨てるという行為から解放されるプロダクトであると実感はしています。また、一次処理したあとに、堆肥に生まれ変わらせるか、飼料にするか、という出口を家族で考えるきっかけにはなるプロダクトだとも思います。
生ごみを堆肥化しても、堆肥として利用する場所がない(土がない)。そして、生ごみの匂いや量を減らしたい。という声は日本の家庭でよく聞かれるので、その点では、このMillがサービス開始時に提供していたようにサブスクリプションの料金体系で、堆肥も回収し、機械で一時処理してしまう、というプロダクトの可能性は、日本国内ではあるだろうと思います。
執筆:松原佳代
関連リンク:Mill https://www.mill.com/