金子みみずちゃんの家で始める、みみずのいる楽しい暮らし【13年間みみずコンポストに取り組み続ける光和商事さんインタビュー】

 
 

日本製の家庭用みみずコンポストをご存知でしょうか?その「金子みみずちゃんの家」を製造・販売するのは広島県に拠点を置く光和商事(株)。このプロジェクトを発案し、13年間に渡って率いてきた同社代表の久保幸路さんと、みみず係の別府恵さんにお話を伺いました。

金子みみずちゃん_1

土木の商社がミミズコンポスト!?

ー土木建築の資材を取り扱う商社である光和商事さんですが、一見まったく異なる事業であるミミズコンポスト事業を開始されたきっかけを教えてください。


久保さん:私は環境に関わる仕事をしたいと入社以来ずっと思っていたんです。当時から環境の本を読んだり、調べたりしていました。そして30歳の頃、中国での植林活動に参加することになりました。

わざわざ日本から行って植林活動することに対して疑問を持ち、中国の現地の人がやったほうがいいのではないかと思っていたんです。その時に現地の方が「世界は繋がっていて、日本で消費される衣服にしても、需要が増えれば羊が必要になり、中国で羊を買う人が増え、牧草地が増え、砂漠化が進む。そのように世界で起きていることは必ず繋がっていて、環境問題はその中で起きる。だから、植林活動で来た人にはこの中国の様子を見て、持ち帰って伝えてほしいと考えている」と話されました。

そして日本に帰り、私も伝えることをしよう、そのために何をしようかと考えていたところ、広島でミミズを使って生ごみを堆肥化していた事業者や、広島ミミズの会の加用さんとの出会いがあり、ミミズコンポストの素晴らしさや、やり方を教えていただきました。日本に家庭用のミミズコンポストがないということがわかり、じゃあそれをつくってみようじゃないか、と新規事業としてスタートしたのが13年前の2009年になります。

商社としてお付き合いのあったメーカーさんの協力のもと、海外のミミズコンポストを参考にして日本版につくり替え生まれたのが金子みみずちゃんの家です。広大な土地でミミズを使って生ごみを処理する、という事業アイデアもありましたが、家庭にミミズコンポストを普及させることに意味があると思い、このコンポストになりました。

金子みみずちゃんの家_商品

金子みみずちゃんの家は3段重ねのみみずコンポストだ。「黄金の堆肥を産む子どもみたいなもの」という意味を込めてつけたそうだ。詩人の金子みすずさんにも由来しているのだとか。24時間暗い中でコツコツと堆肥化を続けている姿が金子さんの詩と呼応しているとも言う。

広島市にあるミミズを養殖するための専用養殖場


ー新規事業とはいえ、土木建築を営む中で、いきなりミミズを始める事に対して、社内からの反応はいかがでしたか?


久保さん:会社が新規事業を募集していたのでタイミングは良かったのですが、まったく理解は得られませんでしたね。ただ、企業価値を高めるものにはなるだろうという信念はあったので、地球にとって大事なことなんだと、社内にプレゼンをして説得しながら続けてきました。赤字は出さないという約束で、黒字もあまり出さないかもしれないけど、継続することに意味がある事業になると思ったので。最近は入社する若いひとを中心に、社会に対して良いことをしている、価値あることをしていると思ってくれる社員が増えてきましたね。

販売するだけではなく、継続するために、いろいろな活動をしてきました。最近では東広島市と連携して、今年は市内の保育園や小学校、お店などの施設13箇所に、木箱型のミミズコンポストを設置し、保育園と小学校では授業をしています。授業は年に4回やっていて、ミミズコンポストについて学び、実際にコンポストに生ゴミを入れてみて、堆肥を取り出して花を育てるという過程で、循環について学びます。子どもたちの反応を見ると、やはりとてもいいな、この事業はやめられないと思います。このコンポスト体験が子どもたちの中にいい形で体験として残るという確信も持っています。

上)授業で子どもたちにミミズのことを教える久保さんとみみず係の別府さん

下)小学校に設置された木箱型のミミズコンポスト 

売ったら終わりではない。生き物ゆえのアフターフォローの大切さ

ー「金子のみみずちゃんの家」を暮らしに取り入れやすくするために、いくつか御社ならではの工夫があるようですね。

久保さん:日本の住環境に合わせて、場所を取らないよう真四角にして、輸送しやすいように組み立て式にしました。もし一度コンポストを止めることになった場合には、分解して保管もできます。また発酵がうまく進むよう、コンポストの壁に断熱材を入れています。

別府さん:売ったらそれで終わりではなく、アフターフォローを心がけています。メールやお手紙、いろいろな方法で連絡をもらいます。私のデスクには「ミミズ相談ダイヤル」も設置しているんですよ。アフターフォローは基本は私が対応していますが、不安なことはすぐに解決したいと思うので、いち早く対応するようにしています。毎週のようにミミズコンポストの近況を伝える電話をしてくださる方もいて、本当にありがたいです。今週も順調だよ、トマト育てたよ、みたいな報告をくださいます。

弊社は商社なので、建設業の方とかメーカーさんとのお仕事がほとんどですが、このミミズ事業は、全国の個人のお客さまと繋がることができるので、私はすごくやりがいを持って働いています。

入社して7年になりますが、入社するまでミミズコンポストという名前自体知らなかったんですが、今となってはもう可愛くて可愛くて仕方がないです。知らなかっただけで、ミミズはずっとこの地球の土をつくってきた生き物で、ミミズにいろいろ学ばせてもらいながら、担当しています。


久保さん:ミミズの形態を知ってミミズ博士になって続けてもらいたいと思っているので、アフターフォローにはしっかり取り組んでいきたいと思っています。



ー困った時に相談できる、みみず係の存在は心強いですね。他に、ミミズコンポストを続けるためのオススメの方法などがあれば知りたいのですが。

久保さん:まず室内に置くことをおすすめしています。すぐに餌もあげられるし、人が住んでいる環境なので気温や湿度も安定しています。そして虫も寄り付きにくいですからね。

別府さん:臭いですか?とよく聞かれますが、まったくにおいがしないんですよ。だからキッチンに置いてくださいと私も言っています。面倒臭くなると続けてもらえませんが、室内であれば、何かのついでに生ごみをぽいっと入れたり、ミミズの様子をこまめに見ることもできます。庭に置くとなると、どうしてもちょっと面倒臭いかなと思っちゃうので、室内がおすすめです。

久保さん:ミミズコンポストのメリット、デメリットは共に、生き物であることですね。都会に住んでいると虫が嫌いな方もたくさんいますし、ミミズと聞いただけで無理という方もいらっしゃいますし、そこはハードルですよね。

別府さん :ミミズを飼って、生き物を育てることになるので、お世話は必要ですが、観察力を養えるし、命の大切さなどいろいろ学べると思うので、教材としてお子様と一緒にやってみてほしいと思います。

久保さん:

継続してもらうことができたら、ミミズコンポストは一番コンポストとしていい形かなと思いますよ。僕も10年以上、家に設置して、自分で調理した生ごみを入れるという生活をしていますが、習慣の一部、生活の一部になっていますね。

自分のペースで入れたい時に入れればいいので。自分があげられるときに餌をあげて、とにかく続けてほしいと思います。ゴミを減らそうという意識で始めると、続けづらいので、楽しくやろう!というのが僕たちが一番大切にしたいコンセプトですね。生活の中にいかに取り込めるかというのが大事です。

地域の子どもたちと授業でミミズコンポストに取り組む様子。

みみず堆肥の魅力とその循環をいかにつくるか

ー堆肥の使い道がない、とコンポストを始められない方は多いと思いますが、ミミズコンポストの場合は堆肥を使わず溜め続けることは可能ですか?

久保さん:ミミズコンポストでもしも堆肥を回収しなかったら、最終的には本当にきめの細かい最高の堆肥になって終わります。ミミズも食べるものがなくなって、自分だけになっていなくなります。食物を投入し続けたとしたらしばらくは生き続けますけど、最終的には、自分たちが生きる意味がなくなってしまい、土に戻っていきます。

だから堆肥の使い道は、とても大事なんです。ミミズの堆肥をうまく使える人からは、これ以上の堆肥はない、もっとできないのかと言われます。ミミズの液肥と堆肥はすごいんですよ。液肥は扱いやすいし、確実に効果が出ます。たくさんの液肥をずっと取ることができて、発酵させることなくすぐに使えて、お金をかけずにずっと撒き続けられます。

使い道がない人にどのように循環をつくってもらうかは、ミミズコンポストを普及していくための課題のひとつです。地域の中での循環形成は僕たちもチャレンジしたいことです。

ミミズの堆肥で育った屋根の高さを超えるひまわり

ミミズは繋がりを生み出す存在

ー今後、ミミズコンポスト事業はどのような展開を考えていますか。

久保さん:堆肥や液肥を活用して、農業への事業展開を考えています。今は敷地の一角で「ミズリー農園」という小さな農園を運営していますが、そこで農園でとれた野菜を地域のお店に渡して、食物残渣をまた堆肥化する、ミミズコンポストを使った循環の仕組みをコミュニティでつくりたいと思います。ミミズ事業は繋がりの事業ですから。

また、ミミズを学ぶ教材をまとめて、自治体様や教育施設に導入いただけるようにしたいですね。ミミズコンポスト自体も進化させて、都市部の若い夫婦でも使えるような小型のタイプや、施設向けコンポストを開発していきたいですね。

ーおふたりにとってミミズコンポストとはどういう存在ですか?

別府さん:この地球に無駄なものなんてないんだと感じさせてくれた存在です。生ごみは本来まだ使える資源なのに、コストをかけて環境を悪くしてまで燃やしていたわけですが、ミミズという生き物がいることで、地球で循環はこうやってつくられていくんだと感じることができました。あと、繰り返しになりますが、単純にこの7年関わってきて、ミミズを好きになって、この生き物は、環境を変えるかもしれない、地球を変えるかもしれない、学びも変えるかもしれない、本当にすごい存在だなと改めて思います。

久保さん:ミミズに明るい未来を感じるし、ミミズを通じて自然との繋がりを感じることができますよね。ミミズコンポストをすることで、人生が豊かになることは間違いないと思っています。やっていると、本当に優しい気持ちになれるんですよね。

ミミズが地球を救うというのは子どもが最初に言ってくれた言葉なんだけど、僕自身もそう信じてやっています。ミミズコンポストが、地域や社会が変わっていくきっかけになったらいいなと思います。なのでこれからも継続していきますし、意義があると感じているので、地域に根ざした循環づくりへと広げていきます。僕にとってはライフワークみたいなものですね。


【プロフィール】

久保幸路さん
光和商事株式会社 代表取締役社長。
1977年1月13 日 広島県広島市生まれ。家庭用生ごみ処理容器「金子みみずちゃんの家」を企業開発し、2009年夏から全国に向けて販売をスタート。趣味は、演劇、サッカー、マラソン。

別府恵さん
光和商事株式会社 環境開発事業部所属。
1989年12月19 日 広島県広島市生まれ。入社7年目。みみず係を担当。趣味は、広島カープ観戦と猫カフェに行くこと。

参考URL:

金子みみずちゃんの家 http://www.kowas.co.jp/mimizu/
光和商事株式会社 http://www.kowas.co.jp/
YouTubeチャンネルhttps://www.youtube.com/channel/UC1yM6Iy1Zm3Ol2RWUB-97-Q


写真提供:光和商事株式会社

聞き手:松原佳代(おかえり(株))

 
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